2020.10.20

中国専利法の第4回改正について

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中国専利法の第4回改正について

中国全国人民代表大会常務委員会は、中国専利法の第4次改正案が2020年10月17日付けで可決され、2021年6月1日より施行されることを発表しました。
 
日本企業による出願に関連する主な改正点は下記の通りです。
 
1.意匠特許の保護対象及び存続期間について
(1)部分意匠制度が新設されて、製品の部分の形態について意匠登録を受けることが可能となりました。
(2)現行法では出願日より10年である存続期間が15年に延長されました。
 
2.発明特許の存続期間について
(1)審査による登録遅延を補填する制度が新設されました。出願日から4年を満了し且つ実体審査請求から3年を満了してから発明特許が登録された場合、特許権者の請求に応じて、審査における不合理な遅延期間が補填されます。
(2)医薬品に係る発明特許の期間延長制度が新設されました。中国における販売許可を得た新薬に係る発明特許に対して、特許権者の請求に応じて、薬事審査に要された期間が補填されます。補填期間については5年を超えない且つ新薬販売許可後の合計有効特許権期間が14年を超えないと規定されています。
 
3.優先権書類の提出期限について
発明出願、実用新案出願の提出期限が現行法の3か月から改正後の16か月に緩和されました。意匠出願の提出期限は、3か月です。
 
4.特許の保護対象について
「原子核の変換方法」が特許保護対象から除外されました。
 
5.新規性喪失の例外の適用対象について
国の緊急状態に際し公共利益のために初めて公開された場合は新規性を喪失しないとの規定が設けられました。
 
6.パテントリンケージ制度の新設について
薬事審査を受ける医薬品が他人の医薬品特許権の保護範囲に属するか否かについて、当事者は裁判所に提訴し判断を求めることができようになりました。また、薬事審査の主管機関は、裁判所の確定判決に基づいてその医薬品の販売を許可するか否かを決定することができると規定されました。
 
7.権利侵害紛争事件の損害賠償額及び立証責任について
(1)損害賠償額については、現行法では特許権者の損失、侵害者の利益、ライセンス料の倍数という優先順位に基づいて算出されると規定されていましたが、改正後では特許権者の損失及び侵害者の利益のいずれかを優先にして算出することができるようになりました。
(2)故意且つ深刻な侵害であると認められた際に、損害賠償額を1~5倍引き上げることができる懲罰的賠償制度が新設されました。
(3)損害賠償額の算定が難しい場合における法的損害賠償額が改定前の1万~100万人民元から3万~500万人民元に引き上げられました。
(4)特許権者が挙証責任を尽くしたが帳簿等資料が侵害者に保有されている場合、裁判所は侵害者に帳簿等資料の提出を命じることができ、侵害者がこれに応じない場合、裁判所は特許権者の主張及び証拠に基づいて損害賠償額を算定できるとの規定が設けられました。
 
8.侵害訴訟の時効について
(1)民法の改正に合わせて訴訟時効が2年から3年に延長されました。
(2)時効の起算日が現行法の「侵害行為を知ったまたは知り得た日」から、特許権者にとってより有利な「侵害行為及び被疑侵害者を知ったまたは知り得た日」に改正されました。
 
9.権利行使について
(1)特許権を濫用して公共利益または他人の合法的権利を損害してはならないこと、特許権の濫用により独占行為を構成した場合には独占禁止法に基づいて処理されることを規定する条文が新設されました。
(2)実用新案特許、意匠特許を巡る紛争について、特許権者、利害関係者または被疑侵害者は評価報告書を自ら裁判所に提示できるとの規定が設けられました。この改正により、権利者と利害関係者のみならず、被疑侵害者も評価報告書を請求できるようになると見られています。
 
10.公開許諾制度
未利用特許の利用促進を目的とした公開許諾制度が新設されました。制度の概要は以下の通りです。
・特許権者が第三者への公開許諾を声明し、特許庁により公告されることで、公開許諾が設定される。
・公開許諾の実施期間において、特許権に係る維持年金が減免される。
・設定された公開許諾はいつでも撤回することができ、この場合、すでに第三者との間で成立した実施許諾の効力には影響しない。
・公開許諾が設定されている間、特許権者は独占的通常実施権及び専用実施権の設定を行うことはできない。

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