2020.10.07

台湾の意匠審査基準の改訂

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台湾の意匠審査基準の改訂

台湾における意匠審査基準が改訂され、2020年11月1日から施行されます。今回の改訂内容は主に(1)建築物の外装及び内装を保護対象として明文化、(2)画像デザインに関する規定の改訂、(3)分割出願の規定の緩和、(4)明細書及び図面の開示要件の緩和、の4つとなっています。
 
(1)建築物の外装及び内装を保護対象として明文化
台湾特許庁は、建築物の外装及び内装は意匠の保護対象であるとの立場を採っているのですが、現行の意匠審査基準にはそれが明文化されていませんでした。今回の改訂では、建築物の外装及び内装が保護対象であることが意匠審査基準に明文化されました。したがって実質的な変更ではありません。
 
(2)画像デザインに関する規定の改訂
専利法には、物品に応用するコンピュータ画像やグラフィカル・ユーザー・インターフェイス(以下、「画像デザイン」という)は意匠登録の対象であることが規定されています。しかし、現行の意匠審査基準においては、画像デザインはスクリーンやモニタ等の表示装置の物品としてしか保護されず、投影やバーチャルリアリティで表示される画像デザインは保護対象外でした。今回の改訂では、物品名について「コンピュータプログラム等、実体形状を有しないソフトウェア又はアプリであってもよい」と規定されたので、例えば、物品名を「コンピュータプログラム」とすることにより、投影やバーチャルリアリティで表示される画像デザインを保護することが可能になりました。また、従来は図面において画像デザインが応用される物品を破線等で描く必要がありましたが、今回の改訂に伴いこの規定も削除されました。
 
(3)分割出願の規定の緩和
意匠の分割出願については専利法に規定されています。しかし、現行の意匠審査基準には「出願時に図面が一つの外観を一つの物品に用いたもののみを開示しており、実質的に複数の意匠を明確に開示していなければ『意匠登録を受けようとしない部分』に開示されている内容について、分割出願することができない」と規定されていました。例えば、カメラのレンズ部分の部分意匠出願からは破線でカメラ全体が把握できるのでカメラ全体の意匠の分割出願は可能でしたが、カメラ全体の意匠出願からはレンズ部分が別意匠であると明確に開示されていなかったため、レンズ部分の分割出願は不可能でした。今回の改訂では、上記の内容は削除され、「分割出願は元出願の開示範囲を超えていなければ認められる」と規定されました。これにより、従来は認められていなかった全体意匠の出願から部分意匠の分割出願が可能になりました。また、元出願において参考図として明確に開示された別意匠についての分割出願、及び、元出願で図面で明確に開示された物品を構成する一部の部品の意匠についての分割出願も可能になりました。
 
(4)明細書及び図面の開示要件の緩和
現行の審査基準においては、原則として意匠の全体を開示する図面を全て含まなければならず、例外として、左右や上下が同一、対称である図面や一般消費者が注意を払わない図面においては、意匠の説明に省略する理由を記載した上で図面を省略することができました。今回の改訂では、この原則が変更され「開示されていない図面は意匠登録を受けようとしない部分とみなす」が原則になりました。つまり、意匠登録を受けようとしない部分については、意匠の説明に記載しなくても図面を省略することができるようになりました。一方、意匠の説明に省略する理由を記載した上で省略することができる図面は、現行から「左右や上下が同一、対称である図面や直接知ることができる内容の図面」に一部変更されました。改訂審査基準では、「直接知ることができる図面」の例としてカードのような厚さが薄い意匠が挙げられています。この場合、意匠の厚さが薄いことは平面図、底面図、斜視図により直接知ることができるので、意匠の説明に「正面図、背面図、左側面図、及び、右側面図の厚さは極めて薄い簡単な図面であるため省略する」と記載すれば、正面図、背面図、左側面図、及び、右側面図を省略した上で、正面図、背面図、左側面図、及び、右側面図についても意匠登録を受けようとする部分にすることができます。ただし、図面が省略された結果、意匠登録を受けようとする部分の外観が、提出された図面で十分に開示されていないとき、又はその範囲が明確に限定されていないときには、実施可能要件違反であると判断されます。
 

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