2016.03.25

中国における「専利権 侵害紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する最高人民法院の解釈(二)」の公表について~~(II)

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中国における「専利権 侵害紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する最高人民法院の解釈(二)」の公表について~~(II)

2.主要内容(前回の続き)
 2-1.司法による保護を強化するために、現行法の範疇内で、専利訴訟の「審理期間が長く、挙証が困難、賠償額が低い」といった問題を最大限に解決すること。
 (1) 第21条は、「間接侵害」について規定しました(進行中の「第4回専利法改正案」にも同様の条文が設けられています)。現行実務では、間接的実施者と、専利権を最終的に実施する侵害者との間に意思の疎通がなければ、共同の過失を構成しないと認識されています。しかしながら、間接的実施者は、それ自身により提供する部品が専利権を侵害する製品を生産することのみに使用されることを知りながら侵害者の実施のために提供する場合には故意が認められるとして、当該間接的な実施者が、直接侵害行為のために専用品を提供し又は他人による専利権の侵害を誘発することは、『権利侵害責任法』第9条に規定された「他人による権利侵害を教唆、幇助する行為」に該当し、間接侵害が成立することを明確に規定しました。なお、中国では、間接侵害について従属説を採用しており、つまり、間接侵害が成立するためには直接侵害の成立が前提となっています。
 (2) 第27条は、専利侵害訴訟での損害賠償額の挙証責任に関する規定を補完する条文となります。商標法第63条第2項の規定を参酌し、専利権者側による初歩的立証及び侵害者側による関連証拠把握の実情に鑑みて、侵害者側の利益取得状況に関する立証責任を、侵害者側に分配させるように規定しました。即ち、当該規定に基づいて、専利権者がまず侵害者の利益を一旦立証する必要がありますが、侵害行為に関わる帳簿、資料が主に侵害者により把握されている場合には、人民法院は、侵害者に対して関連帳簿、資料の提出を命じることができます。この命令に対して侵害者が正当な理由なく関連資料を提示せず又は偽装した資料を提示した場合には、人民法院は、専利権者の主張及び証拠に基づいて、侵害者の取得した利益を認定することができます。当該規定は、第4回専利法改正案にも同様に導入されています。
 (3) 第2条は、現行法の範疇で、ダブルトラック問題を解消するために設けられた、無効審決に伴う侵害訴訟の却下に関する規定となります。中国では、専利権者により専利権侵害訴訟が提起された場合に、被告は、当該特許権に対して無効審判を請求することが多いです(無効の抗弁ができません)。専利権侵害訴訟を受理した人民法院は、専利権の有効性について審理する権限を有しないため、通常、当該民事訴訟を一旦停止させ、専利権の有効性を判断する行政訴訟の結果を待つしかありませんでした。しかし、専利権の有効性を確認するために行われる行政訴訟は、審理期間が長く手続が煩雑である実情から、侵害紛争の解決に極めて不利になりかねません。上記のような難題を解決することにあたり、審判部による無効審判に関する審決を覆す比率が低い事実に鑑みて、第2条では、「審判部により無効とされた場合に、専利権侵害紛争事件を審理する人民法院は、無効になった当該請求項に基づく権利者の提訴を却下することができる」と規定し、民事訴訟の効率化を図っています。一方、専利権が、行政訴訟で再び有効と判断された場合、専利権侵害訴訟を改めて提起することが可能であり、この場合における訴訟の時効は行政判決が送達された日から起算されるように規定されています。

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