2024.01.26

(韓国)不正競争防止法の改正

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(韓国)不正競争防止法の改正

(韓国)不正競争防止法の改正

(1)概要
   不正競争⾏為、営業秘密侵害⾏為に対する保護範囲の拡大と救済手段の強化が図られました。法律の施⾏後に発⽣する違反⾏為から適⽤されます。施行は公布の6ケ月後(2024年8月)の見込みです。

(2)不正競争⾏為からの保護対象となる「データ」の定義変更
   現行法では、⼈⼯知能(AI)の学習⽤データのうち、秘密として管理されていないデータは「限定提供データ」として保護されています。一方、現行法では、人⼯知能の学習⽤データのうち、保護されている秘密として管理されているデータには、下記のような保護の盲点がありました。
   (a)非公知状態から公知となった場合に営業秘密として保護を受けられない。
   (b)秘密として管理されていたために限定提供データとしても保護を受けられない。
  改正法では、条文中の「データ」の概念を、「秘密として管理されていない」ではなく、「営業秘密を除く」に変更することにより、秘密管理性⼜は非公知性といった不確かな概念を使⽤しないことで保護の盲点(a)(b)を解消させています(第2条第1号)。

(3)不正競争⾏為に対する⾏政的救済⼿段の強化
   現⾏法では、特許庁⻑等は、(a)不正競争⾏為の確認調査をさせること、(b)違反⾏為に対する是正勧告を⾏えます。改正法では、これらが下記のように強化されました。
   (a)当事者が特許庁⻑等に行政調査に関わる資料(営業秘密及び非公開資料を除く)の閲覧及びコピーを要求できる(第7条の2)
   (b)是正勧告のほか、特許庁⻑が是正命令も⾏える。これを履⾏しない場合、違反⾏為の内容等を公表することができる。また、2千万ウォン以下の過料を賦課できる(第8条第1項及び第20条第1項第1号の2)。

(4)不正競争⾏為に対する⺠事的救済⼿段の強化
   改正法では、不正競争⾏為に対する⺠事的救済手段において、損害賠償請求訴訟のほか、不正競争⾏為禁⽌⼜は予防請求訴訟においても、法院が特許庁等に不正競争⾏為⾏政調査記録の送付を要求できるようにし、送付された調査記録に含まれた営業秘密情報を保護できるように、閲覧の範囲及び閲覧者制限等の手続が規定されました(第14条の7)。

(5)営業秘密の毀損・滅失・変更禁⽌義務の新設
   改正法では、営業秘密の毀損・滅失・変更禁⽌義務が新設されました (第9条の8)。また、不正な利益を得る目的、営業秘密の保有者に損害を与える目的で、他⼈の営業秘密を毀損、滅失、変更した者への罰則規定(10年以下の懲役⼜は5億ウォン以下の罰⾦)が定められました。

(6)アイデアの奪取及び営業秘密侵害⾏為に対する懲罰的損害賠償額の限度の引き上げ
   アイデア奪取(2条1号の不正競争⾏為)及び営業秘密侵害⾏為が故意であるものと認められる場合に課す懲罰的損害賠償額の上限が、損害額の3倍から損害額の5倍に引き上げられました(第14条の2第6項)。施⾏後に発⽣する違反⾏為から適⽤されます。

(7)没収規定の新設
   不正競争⾏為⼜は営業秘密侵害⾏為を助⻑した物品等を没収できる根拠規定が新設されました(第18条の5)。施⾏後に発⽣する違反⾏為から適⽤されます。

(8)法人への罰則強化
   法⼈の代表者等が不正競争⾏為⼜は営業秘密侵害⾏為をした場合に、その⾏為者の処罰に加えて、その法⼈に対して課せられる罰⾦が、行為者と同じレベルから⾏為者に対し3倍までと強化されました(第19条)。また、組織的な犯罪⾏為を抑制するため、営業秘密を侵害した場合の法⼈に対する公訴時効がその⾏為者と同様に10年と規定されました(第19条の2)。

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