2021.02.18

欧州特許庁(EPO)改訂審査ガイドライン「2021年3月版」

特許

実案

欧州特許庁(ヨーロッパ特許)

法令

制度

欧州特許庁(EPO)改訂審査ガイドライン「2021年3月版」

 欧州特許庁(以下、EPOと称する。)の改訂審査ガイドラインが、2021年3月に発効されます。
 従来から、EPOでは、明細書の記載とクレームの記載との不一致を回避することを、出願人に求めてきました。この不一致は、例えば、審査中にクレームの減縮補正(権利範囲を狭める補正)を行った場合などに生じ得ます。
 これまでの審査ガイドラインF-II, 4.2; F-IV, 4.3(iii)には、「明細書及び/又は図面の主題の一部がクレームによってカバーされていない」という不一致の類型が記載されていました。
 今回の改定では、この不一致の類型の記載に関して、以下の点が追加または削除されています。

[追加]
・「明細書の一部分が、クレームの文言によって包含されない又はクレームの補正によりクレームの文言に包含されなくなった発明を実施する方法を開示しているという印象を、読み手に与える場合、これらの部分は、保護の範囲に疑問を投げ掛け、その結果、クレームを不明確なもの又はサポートされていないもの等(EPC第84条)にすることが多い。当該明細書は、クレームと明細書との間の不一致を避けるために、クレームに適合されなければならない。」との記載
・「独立クレームによってカバーされなくなった明細書における実施の形態は、これらの実施の形態が補正後のクレームの特定の側面を強調するために有用であると合理的に見なされない限り、削除されなければならない。」との記載

[削除]
・「ただし、明細書及び/又は図面における装置、製品及び/又は方法の実施例及び技術的記載のうち、クレームによってカバーされていないものが、発明の実施の形態としてではなく当該発明を理解するために有用な背景技術又は実施例として示されている場合には、これらの実施例を残すことが許容される可能性がある。」との記載

 上記の[追加]/[削除]された記載は改訂の一部分です。
 この改訂は、今までのEPOにおける慣行を体系化したものに過ぎませんが、明細書を補正する方法について更なる明確さを求めており、出願人の負担が増大する懸念があります。対応としては、クレームに関係の無い明細書の記載を削除したり、当該記載にマークを付すなどが考えられます。しかしながら、発明内容や審査経過などにより様々な対応が考えられるため、どのように対応するのが良いかは一概には言えず、ケースに応じて最適な対応を選択する必要があります。

一覧へ戻る