2019.10.02
中国審査指南の改定について
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中国審査指南の改定について
中国国家知的財産権局は、2019年9月23日に審査指南の改訂に関する決定を発表しました。改訂後の審査指南は2019年11月1日より施行される予定です。
日本企業による出願に影響を与える主な改正点は下記の通りです。
1.再分割出願の提出時期について
現行の審査指南よれば、分割出願が審査官から単一性の欠陥を指摘された場合、親出願が係属中でなくても、当該分割出願からの再分割出願は可能ですが、再分割出願の提出時期は明確的に規定されていませんでした。
改訂後の審査指南では、再分割出願の提出時期について、単一性の欠陥を指摘された分割出願に基づいて判断されることが明記されています。
これにより、改訂審査指南の施行日以降では、単一性の欠陥を指摘された分割出願が係属している場合に再分割出願の提出が可能であることが明確にされました。
2.再分割出願の出願人及び発明者について
再分割出願の出願人は、元となる分割出願の出願人と完全同一でなければならないこと、
再分割出願の発明者は、元となる分割出願の発明者と完全同一或いはその中の一部の発明者と同一でなければならないこと、が規定されています。
3.権利の移転について
譲渡又は贈与による権利の移転が発生した際に提出する譲渡又は贈与契約は、双方が署名或いは捺印したものでなければならないことが明確化されました。
また、当事者資格を証明する書類を提出しなければならない場合が列挙されました。
4.グラフィックユーザインターフェース(GUI)に係る意匠特許出願について
製品の名称、図面や写真、簡単な説明についての要求が具体化されました。
(1)製品の名称
「グラフィックユーザインターフェース」というキーワードを含む必要がある。動的GUIの場合、「動的」というキーワードを含む必要がある。
(2)図面や写真
・意匠の要部がGUIのみにある場合、GUIを含む表示パネルの正投影図を少なくとも1枚提出しなければならない。
・動的GUIの場合、少なくとも1つの状態でのGUIに係る面の正投影図を正面図として提出しなければならない。その他の状態については、GUIのキーフレームの図面のみを変化状態図として提出すればよい。
・投影設備を操作するためのGUIの場合、GUIの図面に加えて、投影設備を明確に示す図面を少なくとも1枚提出しなければならない。
(3)簡単な説明
GUIを含む表示パネルの正投影図のみを提出した場合、当該GUIを含む表示パネルが適用される最終製品を網羅的に列挙する必要がある。
5.ヒト胚性幹細胞に係る発明について
ヒト胚胎の工業又は商業目的での利用に係る発明は社会道徳に違反したものとして特許権を付与することができないとされていたところ、今回の改訂により、「体内での発育を経ていない受精14日以内のヒト胚から分離又は獲得された幹細胞」を利用する発明については、社会道徳に反することを理由に特許権の付与を拒絶することができないとの除外規定が追加されました。
6.進歩性の審査について
(1)進歩性の判断
進歩性の判断手法である3ステップ法の第2ステップ(発明の区別特徴及び発明によって実際に解決される技術的課題を特定するステップ)について、下記のことが明確化されました。
・発明によって実際に解決される技術的課題は、保護を求める発明において区別特徴で達成できる技術的効果に基づいて特定しなければならない。
・機能的に互いに協働し合って相互作用の関係にある技術的特徴については、保護を求める発明において当該技術的特徴及びこれら技術的特徴間の関係によって達成される技術的効果を全体的に考慮しなければならない。
(2)公知常識の引用
請求項における技術的課題の解決に寄与する技術的特徴を公知常識と認定した場合、原則として審査官は証拠を提供して証明しなければならないことが規定されています。
7.電話や他の形式の討論について
今回の改訂により、電話討論についての規定が下記通り緩和/明確化されました。
・審査過程中であれば、いつでも電話討論を要請できる。
・審査官に限らず、出願人からも電話討論を要請できる。
・発明及び先行技術に対する理解について、また、形式上の欠陥に限らず出願書類に存在する問題全般について、電話討論を要請することができる。
また、討論の手段として、電話に加えて、ビデオ会議、電子メールが新設されました。
8.面接について
出願人から要請があった場合の面接の実施条件が「有益な目的を達成でき、疑問の釈明、食い違いの解消、理解の促進に資するもの」に明確化されました。一方、「書類、電話討論等によって双方の見解が既に十分に示されていて、関係事実の認定が明瞭である場合」などに審査官は面接要請を拒否できることも明確化されました。
また、現行の審査指南では、面接を実施する時期について第1回拒絶理由通知書の発行後と規定していますが、今回の改訂により、関連の規定が削除されたため、今後は第1回拒絶理由通知書が発行される前の段階においても面接審査の実施が可能となります。
9.無効審判について
無効理由の主張に使われる引用文献の組み合わせパターンが複数ある場合、請求人はまず最も主要な組み合わせパターンで対比分析を行わなければならないこと、
最も主要な組み合わせパターンであることが明示されていない場合、最初に記載された組み合わせパターンを最も主要な組み合わせパターンとして扱うこと、が規定されています。
10.繰延審査について
今回の改訂により、発明特許出願、意匠特許出願について審査の繰延を請求できる繰延審査制度が導入されました。繰延審査制度の要点は下記通りです。
・繰延審査の請求は、発明特許出願の場合には実体審査請求と同時に行わなければならず、意匠特許出願の場合には意匠出願と同時に行わなければならない。
・発明特許出願に対する繰延審査の請求は、実体審査請求の発効日から発効する。
・繰延期間は、繰延審査請求の発効日から1年、2年又は3年である。
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