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中国研修報告③(上海編)

中国研修報告③(上海編)

1日目、2日目
 1日目は、移動日です。新幹線で約4時間30分かけて北京から上海まで移動しました。
北京ではそれほど日本人を見かけませんでしたが、上海では日本大使館があり、日系企業も数多くありますので、町を歩けば日本語を話す人たちをよく見かけます。私が滞在した上海のホテル付近の街並みは、狭い道路に沿ってお店が並び、また木々も多く、雰囲気が少し日本に似ていました。2日目は、上海事務所の方のご厚意により、上海観光に連れて行って下さりました。


(昼間の外灘)

(豫園周辺)
 
3日目
 3日目は中国における商標の使用について講義を受けました。中国では、2つのタイプの取消審判があります。

① 三年不使用取消審判
② 普通名称化による取消審判

例えば、技術名称をそのまま商標として採用しており、その技術名称の説明をさまざまな媒体を通じておこなっている場合は、その商標が記述的と判断される可能性があり、上記②の取消審判の対象となってしまう可能性があります。尚、この取消審判は誰でも請求することができます。次に、商標の使用許諾制度について学び、ロイヤルティーの海外送金の金額によっては、税務局又は銀行に商標局の発行した届出許可通知書の提示が必要になることを学びました。つまり、使用許諾届出を行っていなければ送金ができない事態になるかもしれないので注意が必要です。その他不使用取消審判や行政訴訟の事例を学びました。

4日目
 4日目は、裁判所を二か所見学に行かせていただきました。午前は上海IP法院にて、裁判所内の見学を行いました。上海事務所の方が事前に内部をいろいろ見学できることを確認して下さっていたのですが、当日の入口の担当者が厳しかったせいか、見学できる範囲は裁判所のロビーだけになりました。一方、午後に行きました上海浦東新区法院では、今度は一転、荷物検査をすれば、そのまま荷物を持ちながら裁判所に入ることができ、刑事事件と民事事件の裁判の傍聴もすることができました。残念ながら知財に関する裁判を傍聴することはできませんでしたが、実際の裁判の雰囲気を肌で感じることができました。


(浦東新区法院)

5日目
5日目は、午前は、僭越ながら、私が日本の商標実務と事例紹介等を上海事務所の方にさせていただきました。日本と中国では商標の実務が異なる点が多くありますので、両方の相違部分を理解することは、お互いに非常に有益なことだと思います。特に外国人に対しては、コミュニケーションの面で上手く伝わらないことが時々ありますので、お互いの実務について事前に知識を共有することによって、相手の意図していることが理解し易くなると思います。
 午後は、上海事務所のご厚意により上海の人気観光地に連れて行っていただきました。

(孫中山故居記念館にて)
(有名な外灘の夜景です。写真ではわかりませんが、世界中から観光客が大勢来ておりお祭り騒ぎの状態でした。)

6日
 6日目は上海の公証役場に連れて行っていただきました。北京の公証役場に比べ、非常に来場者が多く、多くの人が順番を待っていました。非常にお忙しいところ、公証人の方がお時間を作って下さり、公証・認証の方法や見本を見せていただきました。

午後は、模倣品対策及び行政取締りの事例を学びました。中国では、知財の民事侵害訴訟の中では、圧倒的に著作権に関する侵害事件が多く、2017年度では約68%(約13万件)が著作権侵害、次に商標権に関する侵害事件が約19%(約38,000件)、特許の場合が約8%(約16,000件)、その他5%でした。一方、知財の行政摘発については、特許の事件が多く、2017年度では、約6.7万件が特許事件、商標事件は約3万件、著作権の事件は約3,100件です。特許の場合は一番模倣しやすい外観の特許の事件が一番多いようです。

因みに模倣品を発見した場合、以下のような流れで対策が講じられます。

権利侵害の類型を確認→クライアントの権利を確認→侵害品について調査→証拠保存→対策の選定(警告書送付、行政摘発、税関登録、訴訟等)

証拠保存については、侵害品を公証した上で購入し、また、ウェブページの公証を行うとのことです。

中国に展開している日本企業の多くが頭を悩ましている分野だと思いますので、今回公証役場の見学と模倣品対策の講義を受けられたことは非常に良い経験になりました。

この日の夜は、上海事務所の皆様とバドミントンを行いました。ご存知かもしれませんが、中国では、バドミントンは人気スポーツで、業務後に同僚とバドミントンを行うところもあるようです(確かに、男性でも女性でも気軽にできるスポーツで、且つ、ハードすぎず楽すぎず、私を含め運動不足の会社員には、ちょうど良い運動になるのではと思いました)。

7日目
 研修最終日は、AIの展示会に連れて行っていただきました。多くの中国企業がブースを設けて、AIを用いた製品を紹介していました。こういった展示品の中に模倣品が発見された場合は、公証人と一緒に立ち会い、現場の全ての過程を記録し、公正証書を作成するとのことです。

最後の夜は、大型台風が接近して傘が壊れるほどの暴風と大雨が降りしきる中、上海事務所の皆様に送別会を開いていただきました。本当に足元が悪い中で、お集まり頂いてありがとうございました。

3週間の短い期間でしたが、中国の商標研修だけでなく、中国の文化についても学べる機会をたくさん頂き非常に密度の濃い時間になりました。最後に、今回このような貴重な機会をいただきました中国の特許法律事務所の皆様にこの場をかりて改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

以上で、3回にわたりました中国研修報告を終わります。