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 2015年4月1日より特許異議申立制度がスタートし、2017年3月で2年が経過した。しかし、まだまだ施行から日が浅いため、知財戦略を立てる上で、特許異議申立制度をどのように扱うべきか判断しかねている方も少なくないと思われる。

 そんななか、2017年2月に、特許庁より、特許異議申立の状況が発表された(*1)。

 そこで、特許庁発表のデータや、弊所が独自に抽出した実際の異議申立事件における審理スケジュールデータに基づいて、

 (1)特許異議申立制度の利用状況

 (2)特許異議申立による取消状況

 (3)異議決定までのスケジュール

を中心にレポートする。

 

 まず、上記の特許異議申立の状況(*1)に関するデータを見ていただきたい。

 

申立年月 2015 2016 Total
Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec
申立件数 1 0 0 6 6 36 89 103 123 81 98 91 114 111 91 69 147 140 86 83 103 1,578
審理中 5 8 20 24 19 32 35 48 58 66 53 117 116 79 83 103 866
取消決定 3 10 13 9 5 4 3 3 2 2 1 55
維持決定 1 6 6 28 70 70 87 56 60 53 63 47 23 15 29 24 6 644
訂正有 1 3 16 30 33 41 28 23 22 16 14 4 1 232
訂正無 1 5 3 12 40 37 46 28 37 31 47 33 19 14 29 24 6 412
却下 2 2 1 1 6
取下 1 1 1 3 1 7
【表1】特許異議の申立年月毎の処理状況

 

 2016年12月までの21か月間で約1,600件の異議申立がなされており、2015年10月頃からは月平均100件程度に落ち着いている。

 【表1】のデータに基づいて計算すると、2016年12月末の時点までに異議決定されている事件の数は712件(却下6件、取下7件を含む)であるが、これらのうち、同12月末までに取消決定された事件の数は55件である。つまり、異議申立されたもののうち、7.7%が取消されたことになる。ただし、この時点において審理中の事件が866件もあるため、この数値がどの程度変動するかについて引き続きウォッチングする必要がある。

 

 一方、特許異議申立制度が始まった2015年における特許無効審判の請求数が200件超であり、かつ、その年の請求成立率(特許無効率)が約18%である(*2)ことを踏まえると、現時点においては、思いの外、特許異議申立制度が利用されておらず、かつ、取消決定率もかなり低いと言えよう。

 

 また、上記(*1)では、IPC分類のセクション毎の異議申立数が開示されており、Cセクション(化学;冶金)が481件でトップであり、Aセクション(生活必需品):304件、Bセクション(処理操作;運輸):264件、Hセクション(電気):210件と続いている。セクション毎の出願数では、例えば、Hセクションの方がAセクションよりもかなり多いため、セクション毎の異議申立数の順位は、セクション毎の出願数順位とは関係なさそうである。

 

 続いて、特許異議申立から異議決定までの平均スケジュールを【表2】に示す。本データは、1,500件以上の実際の特許異議申立事件を独自に抽出し、多少のフィルタリングを行った上で、平均化処理を行って得たものである。

 異議の決定については、取消理由が通知されなかったケース(A)、取消理由が通知され、かつ、訂正の請求がされなかったケース(B)、取消理由が通知され、かつ、訂正の請求がされたケース(C)によって、異議申立日からの日数が全く異なるため、A、B、Cのそれぞれについて平均値を算出した。ただし、異議の決定以外のイベントについては、A、B、Cに関係なく、全体での平均値を算出している。

 また、訂正拒絶理由が通知された事件についてはサンプル数が少なかったため、訂正拒絶理由通知の時期やそれに対する意見書提出時期等の平均値は算出していない。

 

イベント内容 主体 日数
特許異議申立 異議申立人
異議番号通知 特許庁 【異議申立日からの平均日数】
10日
異議申立書副本送付 特許庁 【異議申立日からの平均日数】
30日
<取消理由通知なし>
A・異議の決定
特許庁 【異議申立日からの平均日数】
85日
取消理由通知 特許庁 【異議申立日からの平均日数】
異議申立日から80日
取消理由通知に対する
意見書and/or訂正請求書
※1
特許権者 【指定期間】
標準は60日/在外者は90日
【異議申立日からの平均日数】
145日
<取消理由通知あり・訂正の請求なし>
B・異議の決定
特許庁 【異議申立日からの平均日数】
195日
通知書(訂正請求があった旨の通知) 特許庁 【訂正請求書提出からの平均日数】
15日
訂正に対する意見書提出
(訂正請求があった場合のみ)
※2
異議申立人 【指定期間】
標準は30日/在外者は50日
<取消理由通知あり・訂正の請求あり>
C・異議の決定
特許庁 【異議申立日からの平均日数】
255日
【表2】特許異議申立における各イベントの平均スケジュール

 

 異議申立された側としては、異議番号通知が送付されてくることによって異議申立がなされたことを知り、その後送付されてくる異議申立書の副本によって、異議申立の内容を知ることとなる。異議申立書の副本は、異議番号通知から3週間程度待てば届く。

 そして、取消理由は、異議申立から3ヶ月程度で通知される。ただし、取消理由が通知されないまま異議の決定(維持決定)がなされることもあるため、異議申立がされたからといって、慌てて異議申立書の副本の内容に基づいて検討を開始する必要はなく、取消理由が通知されて検討を開始すれば良い。

 

 なお、実際に弊所が代理した特許異議申立事件数件のスケジュールと、【表2】のデータとを比較したが、概ね似たようなスケジュールであった。ただし、事件毎に手続・イベントの内容が異なるため、事件によっては、【表2】のデータと大きく異なるスケジュールとなり得ることは、予めご了承いただきたい。

 

 以上、簡単ではあるが、特許異議申立制度に関してのレポートとさせていただく。

 

(*1) 特許庁HP『特許異議の申立ての状況、手続の留意点について』

(*2) 特許庁HP『特許行政年次報告書2016年版』

 

[ ジュニアパートナー ]

弁理士 畑山 吉孝

info@rc-iplaw.com

畑山 吉孝

2017年2月10日、大阪市内にて、『知財経営セミナー ~知財経営待ったなし~』を開催しました。

寒波の影響で雪がちらつく中、多くの方にご来場いただきました。
第Ⅰ部では、株式会社IP Bridgeの大江先生(弁護士・弁理士)をお招きし、『知財を活用した新たな事業戦略のすすめ』と題して、セミナーをしていただきました。
第Ⅱ部では、『ビジネスの勝敗を分ける知財』と題して、弊所の北村代表パートナーよりセミナーをさせていただきました。

1-1
(最初のご挨拶の様子)

■第Ⅰ部『知財を活用した新たな事業戦略のすすめ』について

3
(大江先生によるセミナーの様子)
第Ⅰ部では、オープンイノベーションの成功事例を示しながら、オープンイノベーション及び知財を経営に上手く生かす手法について説明されました。さらに、知財ファンドを活用した成長モデルに関するお話もありました。

■第Ⅱ部の『ビジネスの勝敗を分ける知財』について

4-1
(北村によるセミナーの様子)

第Ⅱ部では、イノベーションを引き起こすための手段として知財を利用するにあたっては「勝つための権利」を取得する必要がある、という観点でセミナーが行われました。
具体的事例として三つの判例を挙げつつ、訴訟において勝敗の分け目となったポイントが説明され、そして、これらを踏まえて出願段階で注意するべき点が説明されました。
■懇親会について
セミナー終了後は、ささやかながら、立食形式で懇親会をさせていただきました。
終始和やかな雰囲気でご来場の皆様方と歓談することができ、我々としても、とても充実した時間を過ごすことができました。
■むすび
この度は、企業の経営者の方や企業の知財部の方など、多くの方にお集まりいただきまして、本当に有難うございました。
また、大江先生をはじめセミナーに御協力いただいた株式会社IP Bridgeの皆様に、この場を借りて、心より御礼申し上げます。

(弁理士・宮脇慶)

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